相続応用知識Q&A①回答

推定相続人の地位は?

相続開始前の推定相続人は、期待権を有するにすぎませんので、当然に被相続人の個々の財産に対して権利を有するものではありません(最高裁判例昭和30年12月26日判決)。

したがって、被相続人がした売買契約の無効等を主張することはできません。

国籍喪失によって相続は開始する?

国籍喪失によって相続は開始しません(平成24年12月7日民事甲2822号民事局長回答)。

相続は、死亡によって開始します(民法第882条)。

死亡には、自然死亡・失踪宣告による死亡・認定死亡があります。

相続開始の時期

相続開始の時期の時期は、通常、心臓の停止による死亡を意味します。
例外として、「臓器移植に関する法律」「脳死」と判定された場合には、死亡と解されます。

共同相続の一人に相続回復請求の制度の適用はあるか?

共同相続の一人甲が自己の相続分を占有管理し、他の相続人乙の持分を侵害している場合にも相続回復請求の制度は適用されます。但し、甲が侵害の事実を知らない場合、又は甲が自己の相続分であると信じることに合理的な理由がある場合には適用されません(最高裁昭和53年12月20)。

相続回復請求の制度が適用される場合、乙は、自己の相続分を消滅時効によって失う可能性があります。
通常、相続分は、所有権ですので消滅時効にかかりませんが、相続回復請求の制度が適用される場合には、甲が消滅時効を援用することによって相続分を取り戻せなくなります。

しかし、通常、相続人は法定相続人の範囲を知っておりますので、相続回復請求の制度が適用されるのは特殊なケースです。

包括受遺者は相続回復請求権を行使できるか?

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有しておりますので、相続回復請求権を行使できます(東京地裁昭和50年8月11日)。

相続分の譲受人は相続回復請求権を行使できるか?

相続分の譲受人は、相続人の地位を包括的に承継しておりますので、相続回復請求権を行使できます。

特定承継人は相続回復請求権を行使できるか?

特定承継人は、相続人の地位を承継する訳ではありませんので、相続回復請求権を行使できません(最高裁32年9月19日)。

相続権が侵害された事実を知った時とは?

相続権が侵害された事実を知った時とは、客観的に相続権侵害の事実が発生し、かつ主観的に相続人がその事実を確知した時を示します(東京高裁45年3月17日)。

相続回復請求権を行使できる期間中に取得時効できるか?

取得時効の規定は一般規定であり、相続回復請求権の消滅時効の制度は、これに対する特別規定になりますので、相続回復請求権の時効消滅するまで、取得時効を主張できません(大判昭和7年2月9日)。

日本国籍を喪失しても相続人になれるか?

日本国籍を喪失しても相続人になれます(昭和24年12月7日民事甲2822号民事局長回答)

胎児は遺産分割協議できるか?

胎児の出生前は、相続関係が未確定の状態にありますので、胎児のために遺産分割その他の処分は行うことはできません(昭和29年6月15日民事甲1188号民事局長回答)(大判昭和7年10月6日)

養子兼代襲相続人の相続分は?

被相続人の長女の子が養子になっている場合に、長女が被相続人の死亡前に死亡している時は、その養子の相続分と代襲相続人としての相続分を取得します(昭和26年9月18日民事甲1881号民事局長回答)

婿養子の相続分と配偶者の相続分

婿養子が死亡し子供がいない場合、妻は、配偶者としての相続分を取得し、兄弟姉妹としての相続分は取得できません(昭和23年8月9日民事甲2371号民事局長回答)。

二重の相続権を有する人が相続放棄したらどうなるか?

弟を養子にした兄が死亡して、その弟が相続放棄した場合、第1順位の直系卑属として及び次順位である兄弟としての相続を放棄したことになります(昭和32年1月10日民事甲61号民事局長回答)。

但し、養子としての相続放棄は、当然に兄弟姉妹としての放棄したことにはならいという京都地裁昭和34年6月16日の判決があります。
 

有力説としては、先順位での放棄は、後順位の放棄ではない旨の意思表示がされない限り、後順位の放棄に該当するとしております。

実母の死亡後に実父と養子縁組した養子の相続分は、他の兄弟姉妹と同じか?

被相続人が兄弟姉妹のケースで、被相続人の実母の死亡後に実父と養子縁組した養子の相続分は、他の兄弟姉妹の相続分の2分の1になります(昭和29年4月1日法曹決議)。

被代襲者は代襲原因が生じた時に推定相続人である必要があるか?

被代襲者は代襲原因が生じた時に推定相続人である必要はありません(東京高裁決定昭和33年6月24日)。被相続人の死亡時において、被代襲者が生存していたならば相続人になれたか否かで判断します。

縁組前に出生した養子の子は、代襲相続人になれるか?

代襲相続人になるためには、被相続人の直系卑属でなければなりません。縁組前に出生した養子の子は、被相続人の直系卑属ではありませんので代襲相続人になれません(民法第887条、昭和26年12月15日民事甲2347号民事局長回答)。

被相続人の子と婿養子との間に生まれた子は、縁組の日に関わらず代襲相続人になれるか?

被相続人Aの子Bと婿養子Cが婚姻した場合、縁組前に生まれたDは、被相続人Aの代襲相続人になれます(昭和35年8月5日民事甲1997号民事局長回答)。
この場合、DはBを通じて被相続人Aの直系卑属に該当するからです。

過失致死罪に処された相続人は欠格者になるか?

民法891条1号は、「故意」を要件としておりますので、過失致死罪に処されても、その相続人は欠格者になりません(大判大正11年9月25日)。

執行猶予者は欠格者になるか?

執行猶予はその猶予期間を経過すれば、刑の言い渡しは効力を失うから欠格にならないという見解と、一旦犯罪事実が刑事裁判で明らかにされた以上、執行猶予が付されたか否かにかかわりなく、欠格事由に該当するという見解に分かれています。
昭和54年2月19日の法曹界決議では、欠格事由に該当すると決議されております。
欠格事由に該当するという見解が有力です。

公正証書遺言の場合も隠匿にあたるか?

公正証書遺言は、証人2以上が立ち会い、原本が公証役場に保管さることから、秘密性がなく、「隠匿」はあり得ないという見解があります。
しかし、最高裁平成6年12月6日の判決では、公正証書遺言も「隠匿」にあたるという立場に立ちつつも、諸般の事情を考慮して「隠匿」に該当しないと判断しております。

したがって、公正証書遺言で「隠匿」に該当するケースは特殊なケースになると思います。

遺言の形式を整えるための訂正をした相続人は欠格者になるか?

遺言の訂正として外形を作出する行為は、欠格事由に該当しますが、それが遺言者の意思を実現させるために遺言の形式を整える趣旨でされたにすぎないときは、相続欠格者になりません(最高裁昭和56年4月3日判決)。

不当な利益を得る目的ではない相続人が遺言書を破棄した場合も欠格者になるか?

相続人が被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合でも、それが不当な利益を得る目的としてされたものでないときは、相続欠格者になりません(最高裁平成9年1月28日判決)。

したがって、相続欠格事由に該当する遺言書の破棄又は隠匿は、不当な利益を目的とする「故意」が必要になります。

相続人の地位不存在確認の訴えは固有必要的共同訴訟

特定の相続人の行為が欠格事由に該当するか否かを判断する「相続人の地位確認の訴え」は、相続人の範囲及び相続分等の前提になる事項ですので、共同相続人間で合一に確定する必要があります。

したがって、固有必要的共同訴訟と解されます(最高裁平成16年7月6日判決)。

養子に対する廃除請求の判断基準は?

廃除事由としては、虐待、重大な侮辱に限定されず、養子に対する廃除請求は、離縁原因としての縁組を継続し難い重大な事由の存否を一応の基準として判断されます(名古屋高裁金沢支部昭和60年7月22日決定)。

廃除請求は、相続権を含む身分関係の全面的解消である離縁と共通する面があるからです。

実子に対する廃除請求の判断基準は?

廃除事由としては、虐待、重大な侮辱に限定されず、実子に対する廃除請求は、普通養子であったとしたら、縁組を継続し難い重大な事由の存否を一応の基準として判断されます(岡山家裁平成2年8月10日審判)。

配偶者に対する廃除請求は、離婚請求とは別途することは可能か?

配偶者に対する廃除請求につき、廃除原因として主張された事実がたまたま離婚原因に該当する場合でも、離婚原因とは別に、廃除の申立てについて審理判断されます(大阪高裁昭和4年12月25日決定)。

被相続人に対する虐待、重大な侮辱とは?

被相続人に対する虐待、重大な侮辱の具体例は以下のとおりです。

・被相続人に対する告訴(東京控訴院大正4年12月17日判決)
・被相続人に対する訴訟の提起(大判昭和15年3月9日判決)
・被相続人に対する暴行(仙台高裁昭和32年2月1日決定)
・病気療養中の夫をおいて使用人と駆け落ちした妻(新潟家裁高田支部昭和43年6月29日審判)
・浪費及び借財(岡山家裁平成2年8月10日審判)
・暴力団員と婚姻した娘(東京高裁平成4年12月11日決定)

[廃除が認められない事例]
・廃除請求が一時性のものである場合(大阪高裁昭和40年11月9日決定)
・被相続人にも帰責事由がある場合(東京高裁平成8年9月2日決定)
・相続人の行為に正当性がある場合(仙台家裁昭和44年5月10日審判)
・相続人が、精神障害により暴行等をした場合(秋田家裁大館支部昭和43年4月23日審判)

相続人の著しい非行とは?

相続人の著しい非行の具体例は以下のとおりです。

・犯罪(新潟家裁柏崎支部昭和46年11月8日審判)
・不貞行為(名古屋家裁昭和61年11月19日審判)
・遺棄(広島家裁昭和30年9月2日審判)
・行方不明(和歌山家裁昭和56年6月17日審判)

相続人の著しい非行は、被相続人に対する非行に限られるか?

「虐待、重大な侮辱」は被相続に対してなされるものですが、相続人の著しい非行は、被相続人に対する非行に限られません(広島高裁岡山支部昭和53年8月2日決定)。

他人に対する非行であっても、それが被相続人及び他の共同相続人に対し直接間接的に財産的損害や精神的苦痛を与え、相続的協同関係が破壊される場合には廃除原因になります。

遺言による廃除が認めらた事例は?

遺言によって、廃除と認められた事例は、

①遺言書中の「後を継がすことはできないから離縁したい」との文言(最高裁30年5月10日判決)

②遺言書中の「自分の病気中に子供たちをおいてかつ事務経理の引継ぎもしないで男と逃げるなんて許せない」との文言(新潟家裁高田支部昭和43年6月29日審判)

※遺言書の文言によっては、「相続分の指定」と解されることもあります。

占有権は相続されるか?

被相続人が死亡し相続が開始した場合、特別の事情がない限り、被相続人の占有は相続人によって相続されます(最高裁昭和判例56年6月17日判決)。

相続人にとって相続開始日をあらたな占有開始日と言えるか?

相続人が、相続開始時より、相続財産を事実上支配することによって占有を開始し、その占有に所有の意思がある場合には、「新権限」により所有の意思をもって占有を開始したと言えます(最高裁昭和46年11月30日判決)。

したがって、被相続人の占有が所有の意思がないものであっても、相続人は、自らの自主占有を主張して時効取得することができます。

公営住宅を使用する権利は相続されるか?

公営住宅の目的、入居者の資格制限、選考方法など公営住宅法の趣旨からすれば、入居者が死亡いた場合、その使用権は当然に承継されません(最高裁平成2年10月18日判決)。

内縁の妻・事実上の養子は、借家権を承継できるか?

居住用の建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合には、内縁の妻・事実上の養子は、建物の賃借人の権利義務を承継します(借地借家法第36条)。

また、内縁の妻は、被相続人に相続人がいる場合においても、相続人の賃借権を援用して借家権を主張することができます(最高裁昭和42年2月21日判決)。

生命侵害による損害賠償請求権は相続されるか?

被相続人が交通事故等によって死亡した場合、被相続人は生命侵害に対する損害賠償請求権を取得します。

「生命侵害による財産的損害」とは、生きていれば得られたであろう逸失利益のことです。

これについて判例は、「仮に即死であったとしても、その傷害の瞬時に損害賠償請求権が発生し、その相続人にそれが承継されるとして、生命侵害による損害相性請求権の相続されることを認めています(大判大正17年7月31日判決)。

生命保険の受取人が単に「相続人」と指定されている場合、相続財産になる?

「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定されている場合でも、相続人となるべき者の固有財産となり、相続財産にはなりません(最高裁昭和40年2月2日判決)。

生命保険の受取人が単に「相続人」と指定されているのみの場合の権利割合は?

生命保険の受取人が単に「相続人」と指定されているのみの場合、その指定には相続人が保険金を受け取るべき権利割合を相続分の割合によるものとする旨の指定も含まれるいると解されます(最高裁平成6年7月18日判決)。

生命保険の受取人の指定がなく、保険約款の条項で相続人に取得させると定められている場合は?

生命保険の受取人の指定がなく、保険約款の条項で相続人に取得させると定められている場合、保険受取人を被保険者の相続人と指定した場合と同様に、被保険者の死亡時に相続人となるべき者の契約であると解されますので、相続財産になりません(最高裁昭和48年6月29日判決)。

生命保険の受取人が死亡した場合は?

生命保険の受取人が死亡した場合には、保険受取人として指定された者の法定相続人又は順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に生存する相続人が取得することになります(最高裁平成5年9月7日判決)。

死亡退職金の受給権者が法令で定まっている場合の取り扱いは?

国家公務員退職手当法などによって、受給者の範囲及び順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則と異なる定め方がされている場合には、その死亡退職金の受給権は、受給権者である遺族固有の権利であり、相続財産になりません(最高裁昭和58年10月14日判決)。

死亡退職金の受給権者が法人の内部規定で「相続人」と定まっている場合の取り扱いは?

死亡退職金の受給権者が法人の内部規定で定まっている場合には、受給者である相続人の固有の権利であり、相続財産にならないという考え方が有力です。

死亡退職金の受給権者が法人の内部規定で定まっていない場合の取り扱いは?

死亡退職金の受給権者が法人の内部規定で定まっていない場合の判例として、財団法人の理事会が、理事長の配偶者に対して死亡退職金を支給する旨の決議をして支払ったケースで、この死亡退職金は相続という関係を離れて配偶者個人に支給されたとして、相続財産にならないとしております(最高裁昭和62年3月3日判決)。

株式(株主権)は相続の対象になるか?株式(株主権)は遺産分割の対象になるか?

株式(株主権)は、自益性が強く、株主の個性は重視されないため、相続の対象になります。
定款で株式の譲渡に制限がされている場合でも相続の対象になります。

また、株式(株主権)は、遺産分割の対象になります(最高裁平成3年2月19日判決)。
理由としては、株式(株主権)は、可分給付を目的とする債権とは言い難いこと、割り切れない端数が生じる可能性があること、株券が複数の株式を表彰しかつその分割が困難であることがあげられます(東京高裁昭和48年9月17日判決)。

合名会社の社員の地位は相続できるか?

社員間の人的信頼関係が強い合名会社の無限責任社員の地位は、定款に別段の定めがない限り、相続されません(大判大正6年4月30日判決)。

取消権、解除権などの形成権は相続されるか?

取消権、解除権などの形成権は相続されます。

子の取消権の相続を認めた事例(大判昭和6年3月4日判決)
書面によらない贈与の取消権の相続を認めた事例(東京控訴院大正2年7月9日判決)があります。

形成権の相続は、形成権そのものが相続されたというよりも、法律上の地位が相続された結果、形成権を行使できるという見解もあります。

電話加入権は相続の対象になるか?

電話加入権は、加入者が、加入電話による公衆電気通信役務の提供を請求する権利であり、財産的価値を有し、相続の対象になります(東京家裁昭和33年7月4日審判)。

現在では、ほとんど価値がなくなってきておりますので、実務的にそれほど問題になることはありません。
電話加入権の評価額は、相続税の財産評価通達が参考になります。
1本あたり、2,000円ほどです。

著作権は相続の対象になるか?

著作権は、①著作者人格権②著作権財産権の二つに分かれます。
著作者人格権は、著作者が著作物を公表するか否かを決定する権利です。
著作権財産権は、実名等の無断変更等をされない権利です。

著作者人格権は、著作者だけが持っている一身専属権ですので、譲渡したり、相続したりすることはできません(著作権法第59条)。
この権利は、著作者の死亡後も消滅しないものとしてその保護が図られております。
一方、著作権財産権は、譲渡したり相続したりできます。
したがって、その場合の著作権者は、著作権を譲り受けたり、相続した人ということになります。

特許権などの工業所有権は相続の対象になるか?

特許権などの工業所有権は相続の対象になります(特許法第76条)。
特許権などの工業所有権も個人の人格を反映するものですが、特に譲渡性・相続性を否定するほどの一身専属的な性格を部分的に持たないからです。

ゴルフ会員権は相続の対象になるか?

ゴルフ会員権には、預託金会員制、社団法人性、株主会員制の三形態があります。
国内のゴルフ会員権ほとんどは、預託金会員制によるものです。

 

この預託金会員制のゴルフ会員権は、ゴルフ施設を利用できるゴルフ会員たる資格が一身専属的性格を有するのに対し、会員契約上の地位は、そのゴルフクラブの入会承認手続きを得ることを停止条件として相続の対象になります(最高裁平成9年12月16日判決)。

身元保証債人の地位は相続されるか?

身元保証人の地位は、身元本人と保証人の相互の信用を基礎とする性質であることから、相続の対象とならないとされております(大判昭和18年9月10日判決)。

賃貸借契約の保証人の地位は相続されるか?

賃貸借契約の保証人の地位は、身元保証のように広範な範囲の責任を負うものではありませんので、相続人へ承継されます(大判昭和9年1月30日判決)。

取引により生ずる一切の債務を保証する契約(包括信用保証契約)は相続されるか?

継続的売買取引の将来負担すべき債務について、責任の限度額及び保証期間の定めのない連帯保証契約における保証人の地位は、当事者間で終始するものであり、相続の対象になりません(最高裁判例昭和37年11月9日判決)。

罰金納付義務は相続されるか?

大判明治45年5月14日の判決では、罰金刑は受刑者の相続人に対して執行できると判示しております。しかし、罰金も刑罰の一種なのだから、一身専属の義務として、相続されないという学説もあります。

刑事訴訟法第491条では、没収又は租税その他の公課若しくは専売に関する法令の規定により言い渡した罰金若しくは追徴は、刑の言渡を受けた者が判決の確定した後死亡した場合には、相続財産についてこれを執行することができる。と規定されております。

扶養請求権は相続されるか?

扶養請求権は、一身専属的性質を有するから、相続人へ相続されません(大判大正5年9月16日判決)。

但し、相続開始時に既に履行期が到来している扶養請求権は金銭債権ですので、相続されます(東京高裁昭和52年10月25日決定)。

財産分与請求権は相続されるか?

財産分与請求を請求している間に離婚に至る前に死亡した場合や、離婚後に財産分与請求をしないまま死亡した場合には相続の対象にはなりませんが、一旦、財産分与請求がされれば相続性が肯定されます(名古屋高裁昭和27年7月3日決定)。

しかし、上記と異なる判例もあります(大分地裁昭和62年7月14日判決)。
離婚後約1年8カ月後に、元夫が死亡した事例で、
清算的財産分与義務に関しては、それが財産的請求権であることから、その相続が認め、一方、扶養的財産分与義務については、相続財産中に存在するその潜在的持分の取り戻しを認めるとともにその生活保障を図るという相続制度の趣旨は、離婚の場合の財産分与にもあたること、相続人が元夫の立場に立って財産分与に関する協議をすることも可能であることなど理由として、扶養的財産分与義務の相続を認めました。

扶養的財産分与義務の相続を認めたことは、今までの学説と異なる判断です。
異例な判例だと思います。

祭祀財産の承継者を複数指定できるか?

祭祀承継者は原則として1名に限られます(大阪高裁昭和59年10月15日決定)。
しかし、特別の事情がある場合には共同承継・分割承継も認められております。

具体例として、
後妻と先妻の子との間で分割承継を認めた事例(東京高裁平成6年8月19日決定)

相続人間の対立が激しいことを考慮して分割承継を認めた事例(奈良家裁平成13年6月14日審判)

二つの家の祖先が同一で、共同墓地になっていたため共同承継を認めた事例(仙台家裁昭和54年12月25日審判)
などがあります。

相続人でない人は祭祀財産の承継者になれるか?

祭祀承継者の資格に特に制限はありませんので、相続放棄した人も承継者になれます。
被相続人の相続人や親族でなくても承継者になれますし、氏を同じくする必要もありません(大阪高裁昭和24年10月29日決定)。

具体例としては、
共同墓地の共有者や内縁の配偶者などが承継するケースが考えられます。

被相続人による祭祀承継者の指定の方法は?

被相続人による祭祀承継者の指定の方法は、特に制限はありません。
書面、口頭、黙示を問わず指定の意思が推認できれば有効です。
問題は、黙示によって指定した場合です。

黙示の指定と認められた具体例として、
①墓碑に建立者として娘の氏名を刻印した事例(長崎家裁諫早出張所昭和24年10月29日審判)

②会社を承継する息子に承継を推認した事例(東京家平成12年1月24日審判)

などがあります。

祭祀承継者の指定における慣習とは?

祭祀承継者の指定における慣習とは、被相続人の住所地の地方的慣習を示しますが、出身地や職業などによって、一般慣習と相違するところがあれば、それに従うことになります。

実際には、承継者を決定するほどの慣習の確定は相当に困難になると思います。

家庭裁判所による祭祀承継者の指定の基準は?

家庭裁判所の祭祀承継者の指定基準は、被相続人と承継者の身分関係のほか、過去の生活関係及び生活感情の緊密度、承継者の祭祀主宰者についての意思や能力、利害関係人の意思等諸般の事情を総合的に判断されます。

具体例として、①20以上も被相続人と生活をした内縁の妻を承継者と指定した事例(大阪高裁昭和24年10月29日決定)

②生活を別にしていた長男ではなく、事実上の跡継ぎである二女を承継者と指定した事例(名古屋高裁昭和37年4月10日決定)

③生前別居していた喪主をつとめた長男ではなく、被相続人と同居し、療養看護にあたっていた二男を承継者と指定した事例(大阪家裁昭和52年8月29日審判)

関係者の協議で祭祀承継者を決められるか?

祭祀承継者を関係者の協議で定めることができます(東京地裁昭和62年4月22日判決)。

家庭裁判所による審判は、祭祀財産をめぐって生起する紛争解決法の最終的な保障として定められたものですので、関係当事者の合意によって承継者を定めることもできます。

実務上も、関係当事者の協議によって祭祀承継者を決めることがほとんどです。

祭祀承継者は、祭祀財産を処分できるか?

祭祀承継者は、祭祀義務を負うわけではありませんので、承継後の祭祀財産を自由に処分することができます(広島高裁昭和26年10月31日判決)。

祭祀財産の処分行為は、公序良俗に反しません。

墳墓地について遺産分割協議できるか?

墳墓地について遺産分割協議して、相続人の一人に取得させることができます(昭和35年5月19日民事甲1130号民事局長回答)。

遺体・遺骨の帰属者は?

遺体・遺骨は、祭祀財産に準じて、祭祀承継者に承継されます(最高裁平成元年7月18日判決)。

遺体・遺骨は、所有権の対象になりますが、その性質上埋葬、管理、祭祀、供養の範囲内で権限を行使できるものですので、通常の所有権とは異なり、むしろ、祭具と近似するものでありますので、祭祀承継者に承継させるべきだと考えられております。

預金債権などの金銭債権はどのように相続されるのか?

預金などのように分割できる金銭債権は、各相続人の法定相続分に応じて当然に分割されますので、遺産分割協議をするまでもなく、自己の相続分に応じた払戻し請求をすることができます(最高裁判例昭和29年4月8日判決・最高裁判例平成16年4月20日判決)。

しかし、銀行などの金融機関の実務上の取り扱いは、相続人からの法定相続分に応じた預金の払戻請求に応じておりません。
銀行としては、二重払いの危険がある、相続人間の紛争に巻き込まれたくないなどの理由で、上記の様な取扱いをしているようです。

したがって、実務上、払戻し請求するには、
①銀行所定の払戻請求書に相続人全員が実印を押印して印鑑証明書を添付して払戻し請求するか、
②遺産分割協議書に相続人全員が実印を押印して印鑑証明書を添付して払戻し請求する必要があります。

預金者の共同相続人の1人は、銀行へ取引履歴の開示を請求できるか?

預金者が死亡した場合,共同相続人の1人でも,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき取引経過の開示を請求することができます(最高裁平成21年1月22日判決)。

その根拠としては、預金契約上の地位を共同相続人が準共有していることから、共有者の保存行為として取引経過の開示を請求することができると判示しております。

相続人の1人が相続開始後も引き続き使用している場合、明け渡しを求めることができるか?

共同相続人の1人が、相続開始前から被相続人と同居していたときは、遺産分割協議が成立するまで使用貸借契約が成立したものと推認されます(最高裁平成8年12月17日判決)。

したがって、他の相続人は当然に明渡しを請求することはできません。

相続人の一人が不当に共有物を使用収益している場合、明け渡しを求めることができるか?

遺産分割前の相続財産の共有は、基本的には民法249条以下に規定する共有しての性質を有しております。

そうすると、相続財産の使用は過半数の決議で定めることになりますので、他の相続人は占有の中止を求めることができます。
 しかし、不当占有している相続人も遺産分割請求をすることによって対抗できますので、結局は、協議・調停・審判によって最終的には決定することになります。
したがって、当然に明渡しを求めることはできません(最高裁昭和41年5月19日判決)。

なお、他の相続人は、不当占有して相続人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求することができます(大阪高裁昭和35年5月19日判決)。

内縁の夫婦が共有する不動産に居住している場合、相続人は明渡しを求めることができるか?

内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同使用していたときは、両者間において、その一方が死亡した後は他方がその不動産を使用する旨の合意が成立していたものと推認されますので、相続人は当然に明渡しを求めることができることができません(最高裁平成10年2月26日判決)。

相続人の1人が無断で相続財産に変更を加える行為をした場合、どういう請求ができるか?

共同相続人の1人が無断で相続財産に変更を加える行為をした場合、他の共有者は、その行為の禁止を求めるだけではなく、原状回復請求することができます(最高裁平成10年3月24日判決)。

相続財産に変更を加える行為とは、

①畑を宅地に造成
②山林の伐採
③共有物の売却

などです。

共同相続人の1人は単独で賃貸借契約の解除権を行使できるか?

賃貸借契約の解除は、共有物の管理行為に該当しますので、過半数の決議で決定します(最高裁昭和39年2月25日判決)。

したがって、共同相続人の1人は単独で賃貸借契約の解除権を行使できません。

共同相続人の1人は単独で時効の援用をすることができるか?

共同相続人の1人は、自己の相続分の範囲内で取得時効の援用することができます(最高裁平成13年7月10日判決)。

連帯債務者の1人が死亡した場合、債権者はその共同相続人の1人に対して全額を請求できるか?

連帯債務者の1人が死亡した場合、債権者はその共同相続人の1人に対して、その承継した法定相続分の範囲内で請求できます(最高裁昭和34年6月19日判決)。

遺言によって法定相続分を下回る遺産を「相続させる旨の遺言」によって取得した相続人の相続分は?

相続人1人が、法定相続の額を下回る遺産を「相続させる旨の遺言」によって取得した場合、当該相続人は法定相続分まで他の遺産を取得することができます(山口家裁萩支部平成6年3月28日審判)。

相続放棄と他の相続人の相続分への影響は?

Aが2分の1、Bが4分の1、Cが4分の1、Dが指定なしのケース。
上記ケースで、Cが相続放棄した場合、Cの指定相続分はAとBが上記割合で相続することになります。
Dは、被相続人が相続分を与えない意思であると考えられますので、相続分は帰属しません。

相続分の一部指定と包括受遺者がいる場合は?

包括受遺者の取得する財産の割合が指定され、本来の相続人の相続分が指定されていない場合、又はその反対の場合、配偶者以外の相続人が増加したものとして処理することになるという見解が有力です。

遺留分に反する相続分の指定は無効か?

遺留分に反する相続分の指定も、当然に無効となるわけではなく、遺留分権利者からの減殺請求によって失効するに過ぎないと解されております(最高裁判例平成24年1月26日判決)。

相続分の指定がされた場合、相続債務はどうなるのか?

相続分の指定がされると、相続債務もその指定相続分の割合で承継されることになります。

しかし、債権者との関係では、債権者の同意を得ない限り、相続分の指定は内部関係に止まり、債権者に対抗できないと解されております。

特別受益分を無視した相続分の指定がされた場合の相続分は?

共同相続人の中に特別受益者がいるにも関わらず、被相続人が、これをあえて言及せずに相続分を指定してときは、被相続人の相続開始時に存在する相続財産について相続分を指定する意思を有していたと考えられますので、特別受益の持ち戻しのを免除したと解されております。

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